グループウェア、業務システム、生成AIツール、オフィスインフラ。社内IT環境は、社員の働きやすさや生産性を支える土台です。
生成AIの活用が広がり、働き方や業務の進め方が変わりつつあるなか、社内ITにも新たな役割が求められています。グループ全体で使う共通プラットフォームを整えるだけでなく、組織や職種ごとの「もっと効率化したい」「今の仕組みを改善したい」という声を、具体的な改善につなげていくことです。
LINEヤフーとLINEヤフーコミュニケーションズは今、グループ全体のITプラットフォームづくりと、現場目線のIT支援をつなぎながら、より良い社内IT環境づくりに取り組んでいます。
話を聞いたのは、2026年4月にLINEヤフーコミュニケーションズの取締役に就任した片野さんです。LINEの成長期にはサービス運営を支え、現在はLINEヤフーでコーポレートIT領域をリード。今回は、両社が一体で社内IT環境づくりに取り組む背景と、LINEヤフーコミュニケーションズに期待する役割、これから目指す社内ITの姿を聞きました。
Profile
片野 秀人
LINEヤフー株式会社 CTOドメイン コーポレートIT CBUリード 兼 執行役員
LINEヤフーコミュニケーションズ株式会社 取締役2009年3月、ライブドアに入社。サービスインフラやLINE関連サービスの運営、LINEモバイルやLINE Growth Technologyの立ち上げなどに携わる。2014年にはLINE Fukuoka(現LINEヤフーコミュニケーションズ)で、社員向けIT環境やオフィスインフラの整備にも関わる。2019年にLINE(現LINEヤフー)執行役員に就任。現在はLINEヤフーでコーポレートIT領域をリードし、2026年4月よりLINEヤフーコミュニケーションズの取締役として、同社の社内IT組織変革やAI活用に改めて関わる。
「変わり始めている」手応えを、この組織でつくる
――2026年4月、LINEヤフーコミュニケーションズの取締役に就任されました。LINE Fukuoka時代から関わってきた組織に、改めて向き合うことをどのように受け止めていますか。
片野:LINE Fukuokaには、かなり早い段階から関わっていました。現在のLINEヤフーコミュニケーションズにつながる組織の始まりのころから関わってきたので、今回改めて関われることはありがたいですし、貢献したい気持ちがあります。
現在のIT組織にも、これまで一緒に仕事をしてきたメンバーや、私の進め方を知っているメンバーがいます。そうした安心感も生かしながら、新しいチームとして価値を出していきたいと思っています。
そのうえで、自分がここに関わる意味も考えています。新しい取り組みでは、最初の数カ月で「手応え」を感じられることが大事です。一緒に取り組むメンバーにも、会社全体にも、「変わり始めている」と思ってもらえる状態をつくりたいですね。
全体最適と個別最適を、両社でつなぐ
――LINEヤフーとLINEヤフーコミュニケーションズが一体となって、社内IT環境づくりを進めていく背景を教えてください。
片野:生成AIの台頭によって、仕事の進め方そのものを見直す必要性が高まっています。2026年4月、LINEヤフーでは企業バリューの一つとして「スピード10倍」が掲げられました。その実現に向けて、社員が日々使うITプラットフォームや業務環境を、AI時代に合わせて進化させていく必要があります。
グループウェアや生成AIツールなど、多くの社員が使える土台づくりは今後も重要です。一方で、業務は組織や職種によって異なり、「この業務を自動化したい」「今の仕組みを改善したい」といった個別の課題もあります。共通プラットフォームだけでは、そうした困りごとをすべて拾い切るのは難しいところがあります。
全体に向けた大きな施策と、現場ごとの個別の業務課題。その両方を、同じ深さで一つの組織や担当者が見続けるのは現実的ではありません。だからこそ、LINEヤフーで進むグループ全体の方針や技術的な検討と、LINEヤフーコミュニケーションズが培ってきた現場目線のIT支援をつなぎ、両社で全体最適と個別最適のバランスを取っていくことが大事だと考えています。
これまでLINEヤフーコミュニケーションズのIT組織は、主に同社のIT環境を支えてきました。今後は、同社のIT環境改善だけでなく、グループ全体の社内ITサービス品質の向上や、AIドリブンな業務改革にも貢献してもらいたいと考えています。
LINEヤフーコミュニケーションズが培ってきた経験を、グループ全体の環境づくり、業務改革にも生かしていける。そこは、大きな変化の一つだと思っています。
現場の声を、改善につながる場所へ届ける
――LINEヤフーコミュニケーションズには、具体的にどのような役割を期待していますか。
片野:期待しているのは、利用者に近い距離で一人ひとりの困りごとに向き合ってきた強みを生かし、現場の声を改善につながる場所へ届ける役割です。会社としても、カスタマーサポートやオペレーションなど、サービスユーザーに近い業務を担ってきました。その強みは、単に現場に近いことではありません。小さな違和感や困りごとを拾い、改善すべき課題や施策として提案し、改善するまで寄り添って動けることだと思っています。
――現場の声を改善につなげるために、大切になることは何でしょうか。
片野:大切なのは、現場と技術側の距離を縮めることだと思っています。
これは、最初にLINE Fukuokaに関わり始めたころの動きにも通じます。当時も、サービス開発側から提供されたツールを使って、LINE Fukuokaがオペレーションを担う場面が多くありました。改善要望が出ても、開発側との距離があり、なかなか改善につながらないことが多かったんです。
現場では日々発生する小さな使いづらさでも、開発側から見ると新たな気づきに見えることがあります。だからこそ、エンジニアと現場を直接つないだり、現場に来てもらったりしていました。エンジニアが直接聞けば、すぐに改善できることもあります。
今回も、それに近いと思っています。現場で困っていること、こうしたいと思っていることを、届くべきところに届ける。それができると、社内ITの環境はもっと良くなると思います。
生成AIは、導入して終わりではない
――生成AIの活用においても、そうした役割は重要になりますか。
片野:はい。多くの社員が使えるプラットフォームや、活用に向けた教育の土台を整えることはとても重要です。ただ、環境を用意しただけで、すべての部署が自分たちの業務にうまく落とし込めるわけではありません。
エンジニアがいる組織や開発組織であれば、自分たちで活用を進められる部分もあります。一方で、コーポレート部門やオペレーション部門など、エンジニアが近くにいない組織では、個別のフォローが必要になる場面もあります。
だからこそ、グループで検討されている技術やノウハウとも連携しながら、「この業務ならどう使えるか」「どこを変えれば負担が減るのか」を一緒に考える支援が必要です。社内コンサルのような形で、現場の業務課題を整理し、ITや生成AIの活用につなげていく。そうした役割を、LINEヤフーコミュニケーションズのIT組織が担い、LINEヤフーグループへ広く展開していけるといいと思っています。
AIによって仕事のやり方が変わることに、不安を感じる人もいるかもしれません。でも、業務の一部が自動化されれば、その時間で別のことができるようになります。空いた時間で何に取り組むかを考えられるようになると、AI活用をよりポジティブに捉えられるのではないでしょうか。
スピードだけでなく、良くなっていく「角度」を見る
――社内ITや組織づくりにおいて、片野さんが大切にしている考えを教えてください。
片野:私が大事にしているのは、改善のスピードだけではありません。その変化が、良くなる方向に向かっているか。つまり、「角度」を見ています。
社内ITに限らず、ここ10年ほど言っているのは、「自動的に改善されていく仕組みをつくりたい」ということです。5年後、10年後も、会社も社内環境も続いていきます。だからこそ、自分がずっと面倒を見て、コントロールするわけにはいきません。
少しずつでも良い方向に進んでいるなら、その角度を上げていけばいい。逆に、緩やかでも悪くなっているなら、早く手を打つ必要があります。社内IT環境も、使う人の声や環境の変化に合わせて、継続的な改善が回る仕組みにしていきたいと思っています。
「うちの環境が一番いい」と思える社内ITへ
――最後に、これからどのような社内IT環境を目指していきたいですか。
片野:システムやAI、ルールなどについて、「もう少しこういう環境があれば、こういうことができるのに」と感じる場面は、現場にたくさんあると思います。そういうものを、できる限りなくしていきたいです。
みんなが使いたいと思える環境を整えていきたい。「うちの環境が一番いいよね」と思える状態にしたいです。グループの中で利用できる環境に差が出ないよう、できる限り整えていきたいと思っています。
グループ全体のITプラットフォームづくりを進めるLINEヤフーと、現場に近い距離で困りごとを拾い、改善につなげてきたLINEヤフーコミュニケーションズ。
両社の強みを掛け合わせることで、社内ITは単なる環境整備にとどまらず、社員一人ひとりの働き方をより良くする仕組みへと進化していきます。
「うちの環境が一番いい」と思える社内ITへ。その実現に向けて、LINEヤフーコミュニケーションズの役割も、グループ全体へと広がり始めています。