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ソフトバンク 宮澤弦氏 × LINEヤフーコミュニケーションズ 鈴木優輔が語る、モノづくりの原体験とAI時代の「人間力」

2026年10月1日 | Corporate

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AIは今や社会やビジネスの基盤となり、組織も個人も新しい価値創造が求められています。本記事は、LINEヤフーコミュニケーションズの社内ラジオ番組『OPEN1on1』特別編の収録の様子をまとめたものです。ソフトバンクのAI戦略を牽引する宮澤弦さんと、LINEヤフーコミュニケーションズCEOの鈴木優輔が、マイクを前にAI時代の組織運営や人間力の本質について語り合いました。

AI戦略の最前線 10億のAIエージェントが迫る「やり方の再発明」

――宮澤さんは現在、ソフトバンクの常務執行役員としてAI戦略を牽引されていますが、具体的にどのようなミッションに取り組まれているのでしょうか。

宮澤: 今、ソフトバンクはAIに「全振り」しています。25年に孫さんはグループ全体で10億 AI agentsを作る構想を発表しています。
私のミッションは、グループのAI・ASI戦略を、実際の事業や組織の変革につなげていくことです。
具体的には、AIを社員みんなが当たり前に活用できる状態をつくり、AIを前提に新しい事業やサービスを生み出していくことを推進してます。

鈴木: 10億という数字は日常生活ではなかなか触れないスケール感ですよね。

宮澤:桁違いの目標を掲げられると、今の延長線上の積み上げでは到底届きません。そうすると「どうしたらいいんだ?」と、根本的なやり方から発想を変えざるを得なくなるんです。また、やりたいことが明確な人がAIを使うと、圧倒的に強くなるんです。8d2429e0-b4e5-4fd3-9a29-1c58b0b661a2

音楽と団地遊び――異なる原体験に共通する「自分で決める」

――お二人は現在経営の立場にいらっしゃいますが、もともとは現場でモノづくりに深く関わってこられました。宮澤さんは音楽一家に生まれ育ち、音楽やアートに触れてきた感覚を生かして、数々のプロダクト作りに携わってこられました。一方、鈴木さんもリクルート時代にはクリエイティブディレクターをされていました。お二人のモノづくりの原体験は、どこにあるのでしょうか?

宮澤: 両親も姉もピアノをやっていて、私も小学4年生までは音楽家になるための総合的なトレーニングを受けていました。ピアノがメインでしたが、それ以外にもバイオリンや作曲、さらには流れてきた音を聴いて楽譜に書き起こす「聴音」といった特殊な訓練までやっていたんです。
でも、あまり音楽の練習が好きじゃなくて。音楽を辞めると伝えたとき、両親は「音楽は、『音を楽しむ』と書くのだから、楽しくないなら辞めた方がいい。自分の好きなことをやりなさい」と言ってくれました。

そこから、勉強や起業、インターネットに興味を持つようになりました。高校時代には、東京大学の入試で使う理科の選択科目を、直前になって物理・化学から生物へ変更し、独学で挑んだこともあります。振り返ると、私は自分に負荷をかけるのが好きな性質なのだと思います。仕事でも同じです。
ヤフー時代にアプリの責任者を務めていたときは、競合に勝つためにチームで知恵を絞り、機能を改善し、ランキングを上げていく。そのプロセス自体を、みんなで楽しんでいました。9b0f26f3-b18f-4ebc-98ec-bf7583a65e8c

鈴木: 音楽一家の中で一人だけ全く違う道を歩んで、自力で夢中になれるものを探せたっていうのはすごいことですよね。
私のモノづくりの原体験は全く違って、子どもの頃の「団地での遊び」なんです。
たくさんの子どもがいる団地で毎日公園で遊んでいたのですが、学年も運動神経もバラバラな子どもたちが一緒に遊ぶには、オリジナルのルールを作っていかないと成立しません。例えば野球をする時も、自分たちで「7ボールまでOKにしよう」「あっちの方向はホームランなし」など、どうすれば楽しく遊べるかを考えながら、ルールを作ることを毎日やっていました。だから今でも、人にルールを決められるのが嫌いなんです(笑)。大変でも、自分たちでルールを決めて楽しくやっていく。それが私の場づくりやモノづくりの原体験になっています。

宮澤: 「子どもは外で遊べ」というのはまさにそういうことですよね。遊びの中から、社会に出てから役に立つ想像力やチームワークなど、いろんなことを学び取っていくんですから。

鈴木: 公園での体験が今の自分の場づくりや組織づくりのベースですね。

AIが仕事を担うほど、「また会いたい人」の価値が上がる

――AIが多くの作業を代替するこれからの時代、「人間力」が大切になると言われています。お二人が考える人間力とは何なのでしょうか。

宮澤: 5年後、10年後には、誰もがAIを使うのが当たり前の世界になります。そうなったとき、結局問われるのは「一緒に仕事がしたい」「また会いたい」と思われること。AIが作業を代替してくれるからこそ、その人がいることでいかにチームがハッピーになるのか、ということの重要度が上がっていくと思います。

――宮澤さんは本当にいつも自然体で、誰からも愛されるお人柄だと社内でも評判です。その秘訣は何なのでしょうか。

宮澤: 仕事には必ずストレスが伴いますよね。それを溜め続けると絶対に体を壊してしまうので、早いうちにストレスを「溶かして流す」ことを毎日のようにやっています。夕日を見て綺麗だな、って感動したり、この乾杯のビールが美味いなと思ったりして、今日あった日常の小さなラッキーを見つけて喜んで、その日のストレスを翌日に持ち越さないことが大切だと思っています。

鈴木: 日常の小さなラッキーを見つけて楽しんでいると、周りに愛されて、自然と運も転がり込んでくるのかもしれませんね。人間力といっても、人生はいろいろあります。私は、誰もが、いつも笑顔でいられるわけではないと思うんです。粘り強い人、楽観的な人など、みんなそれぞれ個性があって、自分の性格のまま、みんなが自然体で過ごせることが一番大切なのかな、と思っています。

AIによる個別最適と、自然の中でしか得られない学び

鈴木: AI時代を生きる子どもたちへの教育についてはどうお考えですか? 宮澤さんは最近、小学生向けのAIに関する書籍も監修されたそうですね。

宮澤: AIはパーソナライズ学習に最適なツールです。私は息子に塾に通わせる代わりに、AIを使って「志望校合格までに足りないものは何か」を整理し、学習ロードマップや問題を作らせています。 一方で、AIを使える子と使えない子の間で、将来的な選択肢に大きな差が広がってしまう懸念もあります。だからこそ、どんな境遇で生まれた子でも、AIのパワフルさを正しく理解して武器にし、自己実現につなげられるように、小学生向けの書籍「マンガで分かる!小学生から知っておきたいAIとの上手なつきあい方」を出すことにしました。

鈴木: 宮澤さんはコロナ禍を機に長野県の軽井沢にお引越しされましたよね。AIを活用した教育を進める一方で、あえて自然環境での学びも大事にされているのでしょうか。

宮澤: ええ。AIはどこに住んでいても使えますが、田舎での暮らしはそこでしかできません。私自身が北海道の大自然で育ったこともあり、子どもにはそういう環境で育ってほしいという思いがありました。今は私が平日は東京で単身赴任をしていますが、家族は軽井沢の自然の中で暮らしています。野山を駆け回ったり、蜂の巣をつつくと蜂が出てきたり。そうした自然の厳しさの中で得られる生きた学びは、AI時代にはない貴重な経験だと思っています。

鈴木: 私も確かに、住む場所はよく考えました。私が子どもの頃田舎で育って、すごく楽しかったけど勉強するには不便だった経験があったので、子どもが勉強も自然も選べるように、都会すぎず田舎すぎない場所を選びました。自然豊かな緑地保全地区で、よく子どもたちとカブトムシを捕まえていましたね。f5036ee9-5117-4383-8775-3036ecbd08c0

おわりに: 変化を受け入れ、AI時代を共に楽しむ

――幅広いお話を伺ってきましたが、名残惜しいことにお時間となってしまいました。最後に、お二人からAI時代を生きるビジネスパーソンにメッセージをお願いします。

宮澤: AIが仕事を奪うといったネガティブな意見もありますが、私は人間の最大の武器は「変化に対応できること」だと思っています。馬車から自動車に変わったとき、多くの人が自動車の時代に適応してきました。AI時代も同じです。新しい役割や仕事が次々と生まれてくるので、変化に対応していく姿勢が求められます。そういった変化を、楽しみながら乗り越えていけたらいいですね。

鈴木: 私はよく「AIはチャレンジの回数を増やすツール」だと社内で話しています。これまでも手探りで進めていた業務や、苦手だった作業もAIのサポートがあればスピーディーに何度でも挑戦し直すことができます。
AIが私たちの弱みを補ってくれるからこそ、これからは誰もが「その人らしさ」のまま、自分の強みを生かせる時代になるんだと期待しています。

社内ラジオ番組『OPEN1on1』パーソナリティのコメント

10億のAIエージェントという壮大な構想から始まった対話は、モノづくりの原体験、人との関わり方、日常の小さな幸せ、そして子どもたちの学びへと広がっていきました。
そこで繰り返し語られていたのは、AIに負けないための特別な能力ではありません。自分が何をしたいのかを考えること。周囲の人とともに、目的に合ったルールや環境をつくること。自分らしさを大切にしながら、変化を前向きに受け入れることでした。
AIが作業の多くを担うようになるからこそ、人間は自らルールをつくり、周囲と自然体で信頼を築き、新しい変化を楽しんでいく。その「人としての強さ」こそが、AI時代に新しい価値を生み出す力になるのかもしれません。