「コミュニケーションのかたち with+(ウィズプラス)」は、LINEヤフーのサービス運営を担う私たちが、「異なるフィールド」で活躍するプロフェッショナルとの対話を通じて、コミュニケーションの本質を見つめ直す連載企画です。
第2回目にお話しを伺ったのは、明太子の製造販売をはじめ食の魅力を広く発信する株式会社やまやコミュニケーションズで、通信販売コールセンターのリーダーを務める村瀬さんです。「声」で直接つながる電話対応と、顔の見えない「文字」によるメール対応。手法は違えども、お二人の対話からは「相手の背景や環境を想像する」「発言の裏側にある真意をすくい取る」という、共通する本質が見えてきました。声と文字、それぞれの現場で培ってきた経験から、相手に寄り添うための工夫や、チームを支えるリーダーとして大切にしていることを聞きました。
大瀬 利隆 Ose Toshitaka
サービスビジネス本部 ソーシャルコマース運営部
パティシエ・飲食店の経営を経験後、入社13年目。アバターゲームのCS、金融サービスの審査事務等を経て、現在は「LINEギフト」と「Yahoo!検索」におけるToB・ToCサポートチームを統括。
村瀬 博美 Murase Hiromi
やまやコミュニケーションズ 通販CX事業部 CRMチーム リーダー
派遣社員のオペレーターとして入社し22年目。受注受電やアウトバウンド、SV(スーパーバイザー)を経て、現在はコールセンター全体のマネジメントを担う。
パティシエからCS ×22年のコールセンターのプロ
大瀬:LINEヤフーコミュニケーションズの大瀬と申します。入社して丸13年、現在は主に「LINEギフト」のユーザーと出店企業向け、および「Yahoo!検索」の商品情報掲載サービスに関するサポートのチームリーダーをしています。20人のメンバーがメール対応の業務をしています。
村瀬:私はやまやコミュニケーションズで働き始めて22年目になります。派遣社員で電話を受けるオペレーターからスタートし、現在はコールセンターのリーダーを務めています。大瀬さんはもともとパティシエをされていたと伺って、すごく驚きました。カスタマーサポートの世界へ、かなりの転身ですね。
大瀬:そうなんです。パティシエとして8年働いた後、福岡市で飲食店を3年経営していました。食べるラー油が流行った時期に、手作りして瓶詰めして販売したこともあります。ただ、当時は若くて横のつながりもなく、3年で店をたたむことに…。そこで、もっと社会的なつながりを作りたいと思い、大きな組織で自分を磨こうと方向転換。アルバイトとして、今の会社に飛び込みました。
村瀬:飲食のご経験が今の仕事に生きていると感じる部分はありますか?
大瀬:私がパティシエとして働き始めた当時は、職人の世界に「見て覚えろ」という考え方がまだ色濃く残っていました。そのような環境で経験を積んできたこともあり、最初の頃は、人を育成したり、コミュニケーションを取ったりすることが苦手だったんです。最初に入った個人店では接客から始めたものの、苦手意識が表情に出てしまい、叱られた苦い経験もあります。飲食店を経営していたときも、できるだけ裏方に徹していました。でも、ビジネスはあらゆる人とのつながりで成り立っていると身をもって知りました。だからこそ、コミュニケーション力を鍛えたいと思い、この会社を選びました。
「完璧な言葉遣い」から「お客様とのおしゃべり」へ
大瀬:村瀬さんは22年のキャリアの中で、コールセンターを取り巻く環境に変化を感じますか?
村瀬:時代は大きく変わったなと実感しています。入社当初は、「お客様のご注文を正確に聞き取り、手配すること」が重視されて、言葉遣いも一言一句間違えないよう厳しい教育を受けました。でも、今はLINEやメールなど文字でのやり取りが増え、電話で話すこと自体に苦手意識を持つお客様も増えています。堅苦しいマニュアル通りに注文を聞く時代は終わり、今は「まずお客様と話そう」というところから研修が始まります。
大瀬:マニュアルよりも、人としての対話を重視する流れになっているのですね。
村瀬:はい。かつては、オペレーターが担当のお客様を持つ制度もありました。退職時の引継ぎや個人情報のやり取りに課題があり、会社として担当制はやめました。でも、今はまた「お客様一人ひとりに合わせた対応をして、ファンになっていただこう」という流れが戻ってきているように感じます。「〇〇さんはいますか?」とオペレーターを指定して電話してくださるお客様もいらっしゃって、そんな信頼関係を築けるのは素晴らしいことだと思います。
的確な回答だけでなく、「ありがとう」を目指す
大瀬:実は今の会社に入る前、半年ほどコールセンターで働いたことがあります。そこでお客様から理不尽な言葉を投げかけられ、クレーム対応の難しさを痛感して、コール業務を辞めたんです。だからこそ、長年コールセンターの業務を続けている村瀬さんはすごいなと思います。
村瀬:私も入社当初は悩みました。でも、その大変さの先にすごい感動があるんです。とことんお客様に向き合い、まずはお気持ちを丸ごと受け止める。それを積み重ねるうちに、「あなたに話せてよかった」と言っていただける瞬間が訪れます。大瀬さんはメール対応ということで、文字ならではのこだわりがありますか?
大瀬:メール対応はお客様の顔も声も分かりません。だからこそ、強い言葉を書かれる方もいらっしゃいます。でも、手間をかけてメールを送ってこられるのは、それだけ強い思いがあるからだと捉えています。何かしらの思いを持ってコンタクトしてくださったから、私たちは全力で応えようという姿勢で業務に向き合っています。
村瀬:素晴らしいですね。私がメール対応をしていたときは、自分の文章で理解してもらえたのか不安になることもありました。そこで、最後にお客様から「ありがとう」の返信をもらうことを目標にしていました。問い合わせに回答したら終わりというのが当たり前ですが、「ここまで教えてくれてありがとう」と返信をいただけると、とてもうれしかったですね。
電話でも同じで、注文が終わった後に「最近は暑くなってきましたので、お身体に気をつけてくださいね」といった一言を添えていました。すると、お客様から「あなたもね」と温かい言葉が返ってくる。それがオペレーターの大きなやりがいになっています。
大瀬:今のお話を聞いて、ハッとしました。私たちはこれまでも回答の質を大切にしてきましたが、的確かつ迅速に回答することが、一つのゴールになっていたかもしれません。その先にある「ありがとう」まで追求する気持ちが足りなかったのではないかと気づきました。メール対応はお客様の反応が見えにくく、サービスに貢献できている実感を持ちにくい部分があります。だからこそ、リーダーとして「自分たちの仕事の先にはお客様がいる」「ありがとうをもらえる仕事を」と伝えていく必要があると感じました。
「何を言ったか」より「なぜ言ったか」を深掘り
村瀬:大瀬さんがチームのマネジメントやサポート業務で大切にされていることは何ですか?
大瀬:私のチームでは、問い合わせが非常に短い文で届くこともよくあります。それだけでは、その方が本当に困っていることが分からないこともあるので、書かれた言葉に至った背景や真意を考えて回答するようにしています。これはお客様だけでなく、社内のコミュニケーションでも同じです。私自身、上司などに相談しても「うまく伝わらなかった」と感じた経験があります。だから、リーダーとなった今は、メンバーがなぜこの発言に至ったのか、本当は何を言いたいのかを深掘りするようにしています。
村瀬:どのように深掘りするのですか?
大瀬:思い込みで決めつけず、「どんなことがあったの?」「今の話はこういうこと?」と質問しながら、「今の話をまとめるとこういうことですよね」と丁寧に答え合わせをしていく。こちらから「こうだよね」と誘導すると、相手は「そうです」としか言えなくなり、「この人は私の話を聞いてくれない」という不満につながってしまいます。相手自身の言葉で話してもらい、それを一緒にまとめることで納得感が上がると思っています。
村瀬:私は日々の会話で、ついポンと結論を返してしまうことがあるので、すごく感心しました。「なぜこの人はこういう質問をしてきたのだろう」と一歩立ち止まって深掘りする姿勢は、すぐにでも取り入れたいです。
寄り添うことで、一人ひとりの力を引き出す
大瀬:村瀬さんは普段、チームメンバーとどのように接していますか?
村瀬:日頃からよく声をかけています。センターを歩き回って、「今日、体調は大丈夫?」などと声をかけ、必要なら個別に面談もします。本当の悩みを話してもらうには信頼関係が必要なので、仕事とは関係のない話もします。リーダーとメンバーという垣根を越えて、一つのチームとして安心感を持ってもらいたいんです。
大瀬:メンバーへの指導で意識されていることはありますか?
村瀬:人それぞれ、得意なことと不得意なことがあります。できないことを押し付けるのではなく、得意なところを伸ばしたいと思っています。例えば、会話が続かないオペレーターさんには、会話が上手な人の対応をモニタリングしてもらいます。まずマネしていくうちに話すことに慣れ、自分らしい言葉が自然と生まれてくるんです。お客様も一人ひとり違って、おしゃべりが好きな方がいれば、必要な会話だけでいいという方もいます。お客様に合わせた対応ができていれば、それが正解だと伝えています。
大瀬:型にはめるのではなく、その人の中にあるものを引き出すことが重要なんですね。
村瀬:そうですね。私自身、若い頃はしっかりまとめなきゃと思い、口うるさく言っていた時期もあります。でも、失敗や経験を重ねて、今はお客様にもスタッフにも寄り添うことが最も大事だと思っています。
相手の「背景の音」を聞き、目指すは“人間AI”!?
大瀬:村瀬さんのお話を伺っていると、温かい人間性とプロ意識を感じます。長年のキャリアで培われてきたのでしょうね。
村瀬:コールセンターでは、昔から「お客様の背景の音を聞きなさい」と教えられてきました。電話の向こうで、どんな状況で話しているかを想像するんです。犬が鳴いていたり、赤ちゃんが泣いていたり、車のハザードランプの音が聞こえたりしたら、「今、大丈夫ですか?」と聞いてみる。耳を澄まして、お客様の状況を想像しながら会話をするんです。反対に、商品の説明をするときは、お客様が想像できるような案内を心がけます。最近はAIが流行っていますが、私たちはお客様の困りごとを電話1本で解決する“人間AI”になれたらいいなと思っています(笑)。
大瀬:人間AI、いいですね。村瀬さんたちが実践されていることは、人間ならではの領域ですね。お客様とのコミュニケーションで印象に残っているエピソードを教えてください。
村瀬:年に1~2回、「うまだし」というお出汁だけを電話で注文してくださるお客様がいます。その際、オペレーターさんが何気ない会話で「最近、何を作ろうか悩んでいる」というお話を伺い、うまだしを使ったレシピをご紹介したんです。すると数日後、そのお客様から「教えてもらった料理を作ったら、主人がものすごく喜んでくれたの。本当にありがとう」と、お礼を伝えるためだけにわざわざ電話をいただいて。最近、一番うれしかった出来事です。すぐに朝礼でメンバー全員に共有して、オペレーターさんのやりがいにもつながったと思います。

どのように明太子が作られるのか?分かりやすく教えていただきました
「お客様の笑顔」と「チームの幸せ」を求めて
大瀬:私たちはLINEというプラットフォームのサービスを運営しています。自社の商品をお客様に直接お届けしているやまやさんと比べると、現場のオペレーターが、自分の仕事がユーザーやサービスにどう届いているのかを実感しにくい。だからこそ、村瀬さんがおっしゃった「お客様から『ありがとう』の言葉をもらうことを目標にする」という意識づけが重要だと気づかされました。リーダーがサービスとオペレーターの距離を近づけ、やりがいを感じられる環境をいかに作れるか。今後のマネジメントで意識していきます。
村瀬:私は大瀬さんのお話を聞いて、相手の言葉を深掘りし、最後に「つまり、こういうことですよね」と答え合わせをするコミュニケーションは、すぐに取り入れたいと思いました。「なぜこういう質問をするのかな」と考えながら、もう一歩深掘りすることで、本当に困っていることや伝えたいことが分かるのだと思いました。
大瀬:私も村瀬さんのお話からいろいろ学ばせてもらいました。これまで他社の方との交流では、業務的な数値の話に終始することが多かったのですが、今回は「コミュニケーションの本質」というテーマで、共通の悩みや目指すべき理想について共感し合うことができて、非常に有意義な時間でした。
村瀬:私も本当に楽しかったです。扱うツールやチャネルは違っても、目指すところは「お客様の笑顔」と「チームの幸せ」だと分かり、元気をいただきました。
大瀬:今日学んだことを、これからのチームづくりやお客様対応に生かしていきます。ありがとうございました。
コールセンターはワンフロアの中心に配置され、他部署との距離が近いことも特徴です。商品開発担当者から「自分たちが苦労して作った商品を、オペレーターがお客様へ丁寧に案内してくれているのが聞こえてきて、とてもうれしかった」と声をかけられたこともあるそう。部署を越えて仕事の価値を実感できる環境が、日々のコミュニケーションを支えています。

取材後に、屋外にあるモニュメントで記念撮影、二人ともとても素敵な笑顔で撮影に応えてくれました。オフィスと工場に隣接する施設「やまやファクトリーテラス」は、とても素敵な場所でした。
やまやファクトリーテラス Yamaya Factory Terrace
〒811-2498 福岡県粕屋郡篠栗町彩り台 1-1 2F
https://www.yamaya.com/factoryterrace/
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